整形外科で診る手のしびれについて

奥井医師

奥井医師

近年、手のしびれ、痛みで困っている方はたくさんみえます。その中でも頻度が高く、治療で改善が見込める病気の一つが手根管症候群です。
その治療に積極的に取り組んでいる整形外科:奥井 伸幸医師に話を聞きました。

手根管症候群とはどのような病気ですか?

手首にある手根管という指につながる神経と腱が通るトンネルの中で、神経(正中神経)が圧迫されてしまう病気です。
親指(母指)、人差し指(示指)、中指と、薬指(環指)の親指側(橈側)のすべてか又は一部がしびれるのが特徴です。しびれだけではなくチクチク、ジンジンのような痛みが出ることも多く、朝起きたときに悪化しているので手を振って症状を軽くしようとします。痛みやしびれで目が覚めてしまう方もみえます。悪化してくると親指の付け根(母指球)の筋肉がやせてしまい、つまむことが難しくなります。

手根管症候群はどのような方に起きやすいですか?

どのような年齢、性別、職業の方でも起こりますが、特徴としては45~50歳(更年期)以降の女性に多く、職業にかかわらず主婦の方にも多く発症します。妊娠中、骨折などの外傷後、人工透析中、糖尿病の方などは特に注意が必要です。
人口10万人に対して約400人が罹患しているという報告があり、四日市市約30万人の中には1000人以上と推測されます。

手根管症候群の診断はどのようにするのですか?

症状をお聞きするだけである程度の判断ができます。
誘発テストとして手首を手のひら側に曲げると症状が悪化する(Phalenテスト)、手首の手のひら側(掌側中央)をたたくと痛みやしびれが放散する(Tinel様徴候)、手根管部で神経を圧迫すると症状が悪化する(正中神経圧迫テスト)などがあります。この誘発テストが二つ以上陽性の場合は90%以上で診断が確定します。
この時、環指の半分は正常で橈側にだけ症状が出ると、正中神経のみが障害されていることがよくわかります。
確定診断のためには神経伝導速度検査を行います。これは神経に弱い電気刺激を加えて神経の働きを検査するものです。刺激を与えてからの反応時間を測ることで神経機能が異常かを判断します。
この他に知覚検査、超音波検査、レントゲン撮影、場合によってはMRI検査などを追加します。

手根管症候群の治療はどのようにするのですか?

市立四日市病院では、手術以外の治療としては装具療法と手根管内ステロイド注入療法があります。
夜間のしびれや痛みが強いようであれば、夜間のみ手首を包帯で固定したり、手首を安静にするために装具をつけたりことがあります。
痛みが強く、手術治療を希望されない方にはステロイド注射を行うことがあります。これは一時的には効果的なことが多いですが、1か月以上の効果は不確定です。
治療効果が高く、最も推奨されている治療は手術で手根管を開放することです。
特に親指の付け根の筋肉(母指球筋)が萎縮したり、つまみ動作がやりにくくなっていたりする方は手術をお勧めしています。長い間放置していると手術しても改善が難しく、つまみ動作の不良やしびれなどの症状が残ってしまう可能性が高くなるからです。

手根管開放術とはどのような手術ですか?

麻酔は腋窩伝達麻酔または局所麻酔で行います。
腋窩伝達麻酔とは、超音波(エコー)を用いて腋窩部で神経の周囲に麻酔薬を注入する方法です。上肢のみの麻酔で全身への影響は少なく、日帰り手術が可能です。
手術方法は横手根靱帯直上を皮膚切開する手根管開放術と内視鏡を用いる鏡視下手根管開放術とがあります。
どちらにしても手根管(神経と腱のトンネル)を構成する横手根靱帯部分を切離して手根管を開放し、神経の圧迫を解除することで良好な成績が報告されています。

手術の後はどうですか?

手術後は10日~2週間で抜糸を行います。その間は手を汚す作業、家事は行えません。
術後創周囲の痛みがしばらく残りますが、術前の夜間痛などは早期に改善することが多いです。
しびれの改善は早期に消失する方からしばらく時間がかかる方まで、術前の症状によってまちまちで、症状期間の長い方、重症な方ほど回復に時間がかかります。
抜糸後、期間をおいて約1年は通院で経過を観察させていただきます。

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