婦人科におけるロボット支援下手術

長尾医師

長尾医師

 当院は2019年に手術支援ロボット(ダビンチ)を導入しており、産婦人科では2020年12月に一例目のロボット支援下子宮全摘術を施行しています。
 ロボット手術を行う利点としては、従来の腹腔鏡手術のメリットに加えて、腹腔鏡手術や開腹による良性・悪性腫瘍摘出術よりも繊細かつ精度の高い手術が可能といったことがあげられます。多くの執刀経験を持つ、産婦人科:長尾 賢治医師に話を聞きました。

ロボット支援下手術とはどのような手術なのですか?

 市立四日市病院では、手術支援ロボット「da Vinci Surgical System(ダビンチ・サージカルシステム,ダビンチ外科手術システム)」を用いた腹腔鏡手術を行なっています。

 手術は全身麻酔下に行い、良性腫瘍手術時間が2~4時間(麻酔時間を含めると3~5時間)です。手術方法としては、腹部4ヶ所に8mmの創(傷)にカニューラと呼ばれる筒を挿入し、ダビンチシステムのドッキングを行います。カニューラからカメラおよび鉗子を入れ、術者がサージョンコンソールと呼ばれる装置(ロボットを操作する機械)にて3次元画像で確認しながら繊細な操作で手術を行います。

従来の腹腔鏡との違いはどのような点でしょうか?

 従来の腹腔鏡手術は、先端が曲がらない真っ直ぐな鉗子や尖刀により行いますので、自由度の低い中で切ったり、縫ったりする操作が必要です。また、カメラ(腹腔鏡)も助手が手に持って操作しています。一方、ロボット支援下手術の場合、鉗子部に関節があるため、切る、縫う作業を理想的な角度で行うことができます。また、ロボットが持つカメラは手ぶれがなく鮮明で、3D の立体視で奥行きも把握することができます。

ロボット支援下手術の利点と欠点はどのようなところでしょうか?

 ロボット支援下手術は鮮明かつ10倍に拡大された3D画像、人の手以上に繊細な動きが可能なロボットアームを用いることにより、従来の手術である腹腔鏡手術や開腹による腫瘍摘出術よりも精度の高い手術が可能となります。
 欠点としては①開腹手術と比較して手術時間が長くなる②気腹による合併症がある③術野を確保するため頭を低くすることにより、術後に肩痛などが発症することがあるなどがあげられます。

どのような疾患が対象となりますか?

 保険上、子宮良性腫瘍に対する子宮全摘出術と、初期子宮体がんに対する子宮悪性腫瘍手術、ならびに子宮脱などの骨盤臓器脱に対する仙骨膣固定術がロボット支援下手術の対象として収載されています。当院においては、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮頸部異形成、子宮内膜増殖症といった疾患を対象としています。現時点では、子宮脱および癌などの悪性疾患は施行していません。
 また、子宮腫瘍の大きさですが、腫瘍の形態や分娩歴および体型などによりますが臍部を超えるような大きな子宮であっても、レルゴリクス等の女性ホルモンを抑える薬剤を使用後に、手術を試みるよう努めています。

入院期間は何日になりますか?

手術前日に入院して頂きます。また、術後5日目退院になります。したがって、7日間の入院が目安となります。

※患者さんにより日数は異なります。

ロボット支援下手術をするにあたって資格は必要なのでしょうか。専門医や技術認定医とった制度はあるのでしょうか?

 ダビンチ手術をするにあたっては、インテュイティブサージカル社のダビンチ手術術者資格(certificate of da Vinci console surgeon)を取得する必要があります。
 日本ロボット外科学会において専門医制度を導入しており、婦人科部門の専門医を取得しています。
 また、2024年夏頃に、日本産科婦人科内視鏡学会が、ロボット手術技術認定制度およびロボット手術認定研修施設の導入を決定しています。2024年1月1日現在、技術認定医取得につき申請中です。

 患者さんの希望と状態に沿った治療を心がけています。詳細は、毎週金曜日の長尾外来に受診して頂けましたら説明いたしますのでお気軽にご相談ください。 

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