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ICU/HCUが新しくなりました

麻酔科/中央集中治療部 副部長 青山 正

市立四日市病院の集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)とハイケアユニット(HCU:High Care Unit)の紹介をいたします。

集中治療とはどういったものでしょうか。ご存じない方も多いかもしれません。集中治療医学会によると、集中治療とは、“生命の危機にある重症患者さんを、24時間の濃密な観察のもとに、先進医療技術を駆使して集中的に治療するもの”であり、集中治療室(ICU)とは、“集中治療のために濃密な診療体制とモニタリング用機器、ならびに生命維持装置などの高度の診療機器を整備した診療単位”と定義されています。

ICUでは、疾患を問わず生命の維持に必要な重要な臓器の機能不全をきたした急性期の重症患者を受け入れます。例えば、多発外傷、急性心筋梗塞、人工呼吸を要するような肺炎、重症感染症などです。また大手術後も臓器不全に陥るリスクがあるため入室対象となります。ICUとは生命維持に必要な臓器を支える治療を行い、患者の命を救う場所です。そのために濃密な診療体制とモニタリング用機器、また生命維持装置などの高度の診療機器を整備しています。重症患者の治療を行うため、一般病棟と比べて、1患者あたり3名以上の看護師が配置されています。そして主治医や各診療科医師、看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、臨床工学技士が協働し治療に当たっています。

HCUはICUと同様に救命を要せず重症患者を受け入れますが、一般病棟の中間に位置して、ICUと同等またはやや重症度の低い患者を受け入れます。ICUでの治療が不要になってから一般病棟での治療が可能になるまで橋渡しも重要な役割です。ICU同様に幅広い患者群に対応するためICUとHCUは看護スタッフが密に交流できるように一体運用となっています。HCUも一般病棟と比べて1患者あたり約2倍の看護師が配置されています。

当院ではICU/HCUの改修が行われ、2021年3月より稼働しています。ICUは8床から10床へ、HCUは4床から16床へ増床されました。これまでの当院では、ICU/HCU病床が不足することがしばしばあり、救急患者の受け入れ制限をせざるを得ない状況が起こっていました。今回のICU/HCU増床により、重症患者の救急搬送を断ることもほぼなくなりました。また各病棟の重症患者をICU/HCUに集めることでより質の高い治療を効率よく行うことができるようになります。

今回の改修工事についてはICU/HCU増床による重症患者受け入れ能力の向上が最大の目的ですが、より高度な特定集中治療室管理料1(「スーパーICU」ともよばれる)の施設基準を満たすためでもありました。「スーパーICU」とは、より医療体制を充実させた集中治療室に認められるものです。この施設認定を満たすには厳しい条件をクリアする必要があります。各ベッド周囲に必要な床面積が、従来の15平方メートルから20平方メートルへと増加されます。また、集中治療専門医、急性・重症患者看護専門看護師を含む医療チームが必要となります。また、臨床工学技士も24時間常に院内に常駐する体制が求められます。「スーパーICU」の認定を受けている施設はまだ限られており、三重県内では、三重大学病院に次いで当院が2施設目の認定を受けました。

新ICUでは陰圧室も整備されました。これまでは空気感染をする恐れのある感染症のある(または感染症の可能性が否定できない)重症患者の受け入れが難しかったのですが、新ICUでは対応可能になりました。既に結核疑いのある患者の人工呼吸管理や、新型コロナウイルス感染の疑いのある緊急手術患者などで活用しています。

ICUでは機械や設備などのハードウェアの整備は重要ですが、患者の予後改善に大きく影響するのはむしろソフトウェアの部分、すなわち専門トレーニングを受けた医師やコメディカルがその診療に深く関与することが重要であるとされています。すなわち、臓器機能不全をきたした重症患者の予後改善のためには、集中治療専門スタッフからなる「ICUチーム」の存在が不可欠です。今回の改修でハードウェアが整備されましたが、ソフトウェア面の充実も合わせてすすめています。ICU/HCUでは疾患を問わず、重症患者を受け入れるため、内科系・外科系を問わず幅広い知識と経験がスタッフに求められます。

現代の医療は高度化、専門化されているため、多職種が共同で医療を行う必要があります。過去には医師が中心となって医療業務を形成していましたが、これでは他の専門職の能力が十分に発揮されず、最善の医療が行われない可能性がありました。現在では、患者を中心にし、それぞれの職種が専門性を発揮しつつ、かつ多職種での連携を深めることで、患者の目標を共有し達成することを目指しています。ICUでは毎朝、主治医、ICU医師・看護師、薬剤師、臨床工学技士、リハビリテーションスタッフなどが集まりカンファレンスを行っています。これによりチーム全体で患者の病態を把握し治療方針、目標を検討、共有することでより質の高い、患者中心の医療を提供します。また、ICUスタッフとリハビリテーションスタッフの連動により早期離床・リハビリテーションにも取り組んでいます。今後も、ICU/HCUスタッフのトレーニングを進め、より良い集中治療を提供できるよう尽力していきます。コロナ禍の昨今、新型コロナウイルス感染症に対応するため、HCUは16床全てを稼働できていない状況も起きています。コロナ禍の収束後は、再びICU10床、HCU16床を一体で集中治療を提供し北勢地区の医療に貢献できるよう取り組んで参ります。

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