
脳神経内科部長 家田 俊明
新型コロナ・ウィルスが猛威を振るっています。原稿を書いているのは2020年12月下旬ですが、まだその勢いは留まるところを知らず、感染者数は増えるばかりです。さまざまな報道機関から新型コロナ・ウィルスに対するアンケートの結果が公表されていますが、いずれも皆さんがコロナ感染症に対する不安を感じ、ストレスを抱えながら過ごしていらっしゃることを明らかにしています。特に、ご高齢の方や基礎疾患を持つ方々では重症化しやすいということも知られているので、そのような方々にとってはひとしおつらい状況と考えられます。
このような不安やストレスにさらされ続けていると交感神経が緊張し、身体的にもいろいろな症状が出てきます。そもそも交感神経というのは闘争の神経といっても良いくらい、生物を活動的にする自律神経です。たとえば、脈拍数を増加させたり、血圧を上昇させたり、呼吸を活発にさせたりします。その反面、消化管の運動は弱まり、唾液の分泌も減ってきます。そのような、働きは、睡眠や免疫にも及び、交感神経の緊張が強くなると睡眠や免疫などの機能にも影響を及ぼします。
コロナパンデミックではコロナにかからなくても不安のため不眠に陥ってしまいます。そこで、気をつけなければならないのは、これまでにも注意を喚起してきたように「危ないお薬」に手を出さないことです。既に2017年に、厚生労働省からエチゾラム、トリアゾラム、ゾルピデムなどベンゾジアゼピン受容体部位作動薬は認知機能、運動機能、感覚機能の低下をもたらし、精神症状を誘発し、しかも、危ないからといって急激に中断すると離脱症状としての不穏・譫妄が出現する可能性も指摘されています。
もちろん、このようなお薬はきちんと専門医によって必要性があると判断され、このような副作用の出現にも十分に主治医が留意して処方されている場合には安心して服用していただいても問題はありません。しかし、十分な問診もなく、安易に処方されている場合には、患者さんの立場からも注意が必要です。最近は、まだ3剤しかありませんが、スボレキサント、レンボレキサント、ラメルテオンといった上記のような危険な作用のない安全な不眠治療薬も発売されているので、主治医の先生とよく相談して、よいお薬を処方していただけるようにしてください。
不安を軽減し、交感神経の緊張を緩和するもう一つの方法は、社会的な孤立から身を守るためには最新のデバイスを利用することも重要です。100年前のスペイン風邪の時には手軽に利用できなかった電話やネットです。電話で家族や親戚の元気な声を聞くことは安心に繋がります。さらにスマートフォンで実際の笑顔を見ながら会話をしたり、ビデオに撮った動画を送ってもらったりできればさらに安心できると思います。
私も外来では、電話再診を行っています。当院ではまだ画像によるやりとりはできませんが、ご家族が来院なさった折にはスマートフォンに録画した動画で実際の動きを見ながら診療の参考にしたり、私を動画に記録してもらってメッセージを送ったりしています。電話で声が聞けるだけでも安心ですが、患者さんの笑顔を拝見できることは、われわれ医療者にとってもはげみになります。
このようにコロナ感染は大変な状況で、今後どうなっていくのか予測もつきませんが、それでも今できることを少しずつでも着実に成し遂げていって、この苦境を乗り切り、また、みんなで明るく語らいながら食事ができる日がやってくることを楽しみにしています。