体を傷つけずにがんを治す放射線治療

佐貫医師

市立四日市病院では2017年に放射線治療棟を増築して高精度放射線治療装置を導入しました。
放射線治療は手術や化学療法と並ぶがんの3大治療法の一つです。
身体を切らずに治療ができ、患者さんの身体への負担が少ないといった利点があります。 
その治療を専門とする放射線治療部:佐貫 直子医師に話を聞きました。

放射線治療と聞くと怖いイメージがありますが、どんな治療でしょうか?

放射線治療装置

切らずにがん治療を行う放射線治療は、臓器を温存することが可能で患者さんの負担が少ないという利点があります。照射中は痛みや熱さを感じません。病状や治療方法にもよりますが、治療室内の滞在時間は10分〜30分以内であり、外来通院も可能です。
放射線を利用してがんを治療する放射線療法は、手術・抗がん剤と並ぶがん治療の三本柱として重要な役割を担っています。

放射線治療はなぜがんに効くのですか?

治療用のX線は、画像診断用X線よりもけた違いに強い出力エネルギーを有します。増殖が止まらなくなった病巣に強い放射線を照射することにより、がん細胞の分裂能力を阻害します。強いX線を安全かつ有効に照射するために、病巣にできるだけ線量を集中させ、周囲の正常臓器に不必要に照射されることが少なくなるよう治療計画をたてます。そして、方法や目的に応じて、多くの場合は少量ずつ分割して照射を行います。

どんながんに治療を行うのですか?

全身のあらゆるがんが治療対象となります。根治的に治療する病気として、例えば肺がんや子宮頸がん、前立腺がん、などが挙げられます。また、術後の再発予防のための治療として、乳がん、子宮頸がんなどがあります。術後再発で手術が難しい場合に、病巣が小さければ、病巣の制御を目的に放射線治療を行うことがあります。そして、痛み、出血、通過障害などの症状を和らげる緩和照射など、守備範囲が広いことが放射線治療の強みです。

どんな治療技術を特徴としていますか?

さまざまな病巣への放射線治療

市立四日市病院では、2021年から強度変調放射線治療(Intensity-Modulated Radiation Therapy, IMRT)を行っています。専用コンピュータによる線量計算で体内の線量を最適化します。また、当院の治療装置は解像度の良い画像撮影装置を備え付けており、従来よりも迅速かつ正確に照射位置を定めることができます。これらの技術により、安全に病巣への線量を増やすことができ、高い効果が期待できます。
また、IMRTの技術を用いつつ、小さな病巣に狙いを定めてさらに高線量を照射するいわゆるピンポイント照射と呼ばれる治療法が定位放射線治療です。脳腫瘍に対する定位照射はもちろん、早期肺がん、限局性肝細胞がん、転移性肺・肝腫瘍などへの体幹部定位放射線治療が対象となり、手術に匹敵する効果も期待できます。
当院は、2023年現在、北勢地区で唯一、IMRTや体幹部定位放射線治療が可能な施設です。

メッセージ

線量検証。線量計の入った模型に放射線を照射して、計画通りに照射できるか確認しています。

近年の放射線治療技術は急速に高度なものに進歩しています。しかし、どんなに治療機器が高度になっても、人が制御することには変わりありません。市立四日市病院では、各専門資格を有するスタッフが在籍し、機器の特性を熟知してしっかりと整備しながら日々研鑽し、最善の治療ができるよう取り組んでおります。
また、主治医や近隣の医療施設との連携も大切にしています。
患者さんそれぞれで最適な治療は異なる可能性があります。患者さんの病気だけでなく、気持ちや背景にも寄り添い、安心・納得して治療を受けていただけるよう努めています。

放射線治療センター受付。奥が診察室です。

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